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「いまだ2%。十勝・帯広をイノベーションの聖地に」KPMGモビリティ研究所倉田剛氏&髙橋智也氏の想い

KPMGモビリティ研究所は、十勝・帯広リゾベーション協議会の共同発起人であり、今回お話を伺った倉田剛さん、髙橋智也さんは十勝・帯広に足繁く通い、活動をされています。

帯広市は、コロナ禍直後の令和2年度に十勝シティデザイン㈱とワーケーション/関係人口増加に関する連携協定を締結しました。同年には「十勝・帯広リゾベーション協議会(※)」が発足されています。これらを起爆剤として首都圏企業群との交流を加速させており、域外から様々な人が十勝・帯広に関わり始めています。
(※)日本におけるイノベーション創出のモデル地域となることを目的とする団体。

KPMGモビリティ研究所とは

——まずはKPMGモビリティ研究所を設立した経緯からお伺いします。

倉田氏:
日本の基幹産業である自動車業界が100年に1度の大改革の時期と言われています。自動車業界に限らず、人の移動、物の移動、サービスの移動が大きく変わろうとしています。地方創生という中でもモビリティは欠かせません。

一方、この領域で日本の多くの大企業は短期間での事業化が出来ないと継続が難しい。そこで私たちは短期的な収益だけにフォーカスするのではなく、中長期的な視点での社会的インパクト、モビリティを中心とした課題解決による世の中への貢献という視点で、“研究所”と冠した組織をKPMG内に作りました。

髙橋氏:
倉田とKPMGモビリティ研究所に入って3年ちょっとになります。私は、以前はKPMGでリスクマネジメントのコンサルティングに従事した後、御縁があって自動車会社様の案件に参画しているうちに、モビリティに強く関心を抱くようになって参画しました。

中学と高校をフィリピンで過ごし、フィリピンの交通状況があまり良くない現状を目の当たりにしてきました。この取組みを通じて知見を得て、育ててくれたフィリピンにも恩返しができたらいいなと思い、日々活動をしています。

プロフィール
写真左/倉田剛(くらた たけし)大阪大学経済学部卒業。米国マサチューセッツ大学MBA修了。朝日新和会計社(現 有限責任あずさ監査法人)入所後、大手鉄道会社グループ、テーマパーク運営会社、製造業、商社等の法定監査ならびに上場支援業務に従事。KPMGモビリティ研究所においてMaaS(Mobility as a Service)やスマートシティに関する調査・研究や、自治体等における実証事業に関与している。趣味はマラソン。

写真右/髙橋智也(たかはし ともや)KPMGコンサルティングにてリスクマネジメントに従事後、KPMGモビリティ研究所に参画。中学・高校時代をフィリピンで過ごした経験から、フィリピンの交通状況解決にも関心。趣味はサイクリング、カメラなど多岐に渡る。

十勝・帯広を選んだ理由

——この地域を選んだきっかけは何だったんでしょうか。

倉田氏:
とある大学のセミナーで十勝シティデザイン㈱の柏尾さんと2019年に知り合い、彼が十勝・帯広で面白い活動をされていることを知りました。最初は柏尾さんと知り合いになった以外は何のツテもありませんでした。

同時期にモビリティ研究所がいろいろとアドバイスを頂いていた筑波大学名誉教授の石田東生先生に相談した際、「帯広市長の米沢さん、十勝バス㈱社長の野村さんにぜひ会ってきなさい」と後押しされたことと、弊社の小見門(KPMGモビリティ研究所所長、KPMGコンサルティング執行役員)が十勝・帯広に行って魅力に取りつかれたこともあり、十勝・帯広が候補になりました。

我々でも知り合いの首都圏や他地域の企業さんを十勝・帯広に沢山お呼びしています。もちろん短期的な事業性が無いと判断して一度きりの訪問になってしまう事業者様もいらっしゃいます。その中で我々が続けている理由は十勝・帯広に、熱量のある人達を惹きつけるポテンシャルがあるからです。三菱地所さんのような大企業やジョルテさんのように社長自らが継続的に関わり続けているので、たしかにそのような磁力があるんだと思います。

リゾベーションという概念

——リゾベーションという概念、言葉は髙橋さんが作られたとお聞きしています。どういった経緯でこの言葉を作られたのでしょうか。

髙橋氏:
2020年に経産省の実証事業に、当初は「ワーケーションMaaS」という名称で応募をする予定でした。私は当初個人でのワーケーションには継続性という意味で少し疑問を感じていました。

特に家族がいる場合ですが、例えば4人家族での旅行には1回で20~30万円ほどの費用がかかります。これだけのお金がかかるのに、旅行中に家族を置いて仕事をすることに理解を得られるだろうか。また、関係人口創出の文脈でいうと、特に理由もなく何度も同じ場所に旅行するだろうか。そのように考えていくと、少し工夫が必要なのではないか、と考えました。

観光を前面に押し出した働き方よりも、仕事があるから何回も行き、空き時間で観光をするという過ごし方を提案した方が、関係人口づくりの観点からも受け入れられやすいのではないかと仮説を立てました。仕事であれば、旅費は企業負担になりますが、企業活動には何らかのアウトプットが求められます。

そこで、地方に行くことで新しい発見や気づきを得て、そこから新しい発想、事業が生まれる、つまりイノベーションをアウトプットに設定してはどうだろうと考えていきました。

となると、ワーケーションという言葉も別のものにしたほうが伝わりやすくなるので、バケーション色を少し抑え、リゾート感を残しつつイノベーション感を出したらどうだろうと。リゾートでワーケーションしてイノベーションを興す、これを掛け算して「リゾベーション」という言葉になりました。シンプルでコンセプトが伝わりやすいものになったのではないかと考えています。

出典:十勝・帯広リゾベーション協議会

十勝・帯広の魅力

——お二人が感じる十勝・帯広の魅力はどのあたりなのでしょうか。

髙橋氏:
いろいろな人を十勝・帯広でアテンドしていますが、紹介しがいのあるエリアだと思っています。食材ひとつとってもなかなか食べられないものや東京よりも遥かにおいしいものもあります。案内しきれなかったスポットを切り口に次の来帯の話をしやすいので、とてもありがたく思っています。

紹介したいことが沢山あり、つい熱っぽく語っていると「髙橋さんが本当に楽しそうに紹介してくれるので、十勝がいいところなのは凄くよくわかりました」と言ってもらえることが多くなりました。

また、共創の時代ということもあり、地域や他社の方々と一緒に過ごすことも多いです。十勝の魅力をさまざまな方々と体験し、その中でたくさんのディスカッションを行えるのもいいですね。リラックスした雰囲気で話せるので、真剣な議論の中にいい具合に遊び心を入れたアイディア出しができるので、十勝・帯広は、イノベーションを興すのに適した環境だと思います。まさに、リゾベーションですね。

髙橋氏「イノベーションには、遊び心も大事だと思います」

倉田氏:
イノベーションを興すには、地域の風土(情熱)、ポテンシャル、一定の規模感が重要だと思います。

帯広は開拓者・依田勉三から受け継がれている気質、情熱を持った人が集まっている土地ですよね。ウクライナ情勢で日本のエネルギーと食の安全保障が話題になっていますが、それを解く鍵は北海道で、かつ一番ポテンシャルがあるのが十勝だと思います。

全国展開、世界発信を見据えると、医療、行政、交通など一定規模のインフラが整っている規模感も必要ですが、一方であまり大きすぎる都市だとプレーヤーも多く、調整や合意形成が大変です。こうやって考えると、イノベーションを興す地域として、十勝・帯広はぴったりだと思っています。

共創拠点「にぎわいターミナル」とは

——共創実証事業について教えてください。

髙橋氏:
『バス停を共創の拠点として再定義・再構築することでにぎわいを生み出そう』というプロジェクトです。帯広の方は真冬マイナス13℃のなか、バス停で、雪の影響で遅れがちなバスを待っているじゃないですか。私も体験しましたが、とても厳しかったです(笑)。そんな環境で自家用車を利用したくなることはよく理解できますが、高齢化など問題があるなかで、公共交通の利用率を高め、路線を維持・確保することは必要です。

そこでスタートしたのが、なるべく冬でもバスに乗ろうと思えるよう快適でにぎわいを生むバス停を作るプロジェクトです。バス停そのものをリ・デザインして地域を構成するひとつとして地位を高めようと目指しています。

仮想にぎわいターミナル「にくや大空」

実証は十勝バスさんが運営する飲食店「にくや大空」をにぎわいターミナルに見立て、物販、健康チェック、利用者の自宅からバス停までの無料送迎などのサービスを試験的に運用しています。現在、にぎわいターミナルのあるべき将来像を地域住民の方々と意見交換をしています。

出典:十勝圏公共交通共創プラットフォーム

——現在生活に寄り添った事業を展開されていますが、より先の未来予想図はどのように描いていますか。

髙橋氏:
2028年あたりの未来予想図を考えた上で計画を立て、バックキャストして、身近なところから何ができるか、何から始められるかといった考え方でやっています。もちろん地域の方々の課題を置き去りにした取り組みをしても仕方がないですし、それは持続可能なモデルにもなりえません。

例えばマルシェバス。空気を運ぶような状況も多い路線バスを維持していくためには何ができるか。車内の空きスペースを活用することで路線の乗客収入以外の収益を上げられないか。それが地域の方々の課題解決や生活の質向上に寄与できないか、という考え方から生まれています。

倉田氏:
私はもっと馬鹿げた大きい夢を描いています。十勝・帯広をシリコンバレーと同じくらいに世界のイノベーションの聖地にしたいし、できると思っています。これを最終目標とすれば、現状はまだ達成度2%にも届いていない感覚ですね。もっと言えば、僕が死んだあとにもこの取組が続いて、世界から評価される日がくればいいなと思っています。

倉田氏「私が死んだあとも続いてほしいというのは割と本気です」

地域への想いと描く未来

——深く地域に関わっていただいているお二人から、十勝・帯広を知らない企業さんや地域住民の皆さんに対してメッセージをお願いします。

倉田氏:
外から人が来ることに色んな捉え方をされる方も当然いらっしゃると思います。ただ、地域が生き残るには、新しい取組が必要だと思います。そのために必要な、魅力的なポテンシャルが十勝・帯広には十分にある。ですので、世界から注目される十勝・帯広を創り上げる取組に、帯広の方も東京の方もみんなジョインしていただけると嬉しいです。

十勝・帯広を、シリコンバレーのように世界中に知られる地域にしたいと夢見ています。

  • 全ての人が自由に移動出来て、そのエネルギー源が十勝・帯広の特徴を活かした家畜由来の再生可能エネルギーを使った持続可能な地域

  • 新しい取り組みがあちこちで行われて、日本中、世界中から企業が集まる地域

  • 「食、エネルギー、モビリティ」分野でのイノベーションが興る地域

髙橋氏:
いろいろな取組みが始まっているので、地域の方々も面白がって関わっていただければ嬉しいです。こちらからの一方通行のものを作ろうとは思っていないので、ぜひ若い方にも興味を持っていただいて、積極的に声を出していただきたいです。私も十勝・帯広に惚れ込んだひとりとして、一緒に良い世界観を作っていきたいと思っています。

インタビューを終えて

十勝・帯広に関わって間もなく3年のお二人。倉田さん、髙橋さん、ありがとうございました!

モビリティ、エネルギーなど世界的な課題とされる領域。これらの領域でも、広大な土地を有し、農業で発展する十勝・帯広ではイノベーションが興る可能性があると感じました。

地域で新規事業を作りたい!と思っている企業の皆様。自らの目でその可能性を見出しに一度いらしてみませんか?随時十勝ツアーも開催しています。興味が湧きましたらご連絡をお待ちしております。

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