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「常に挑戦者でいたい」ソニーのグループ内スタートアップ企業の川村社長が、帯広で目指す「Web3の挑戦状」

今回はソニー内スタートアップ、コーギア㈱の川村社長へお話を伺いました!

コーギアは、帯広市の地元企業と共同で、十勝地域の観光コンテンツを開発しました。その後も、帯広を舞台としてNFTを活用した地域活性化に向けた議論などを継続的に行っています。

なぜ地方創生に関わろうとし、なぜ十勝・帯広に注目をしているのか。会社設立の経緯などを含めて、川村さんの視点から地域の可能性について、語っていただきました。

川村 文彦(かわむら ふみひこ)
2002年ソニー(株)入社。2006年から6年間Sony UK Ltd.に駐在。帰国後、新規事業開発や合弁会社のシニアマネジメントを経験した後、2021年2月にコーギア(株)を設立。

異色のスタートアップ

——コーギアはソニーのグループ内スタートアップとのことですが、どういう会社なのでしょうか。

コーギアはソニーグループの関連会社です。社員は全員ソニーグループの社員で出向者です。ただ他社さんと違うのは、私が経営層に直接提案して創業した会社ということです。

——設立にあたって社内のどちらに提案しに行ったのでしょうか。

当時、新規事業が御供みともさん(当時常務、現副社長)の下にまとまっていたので、直談判しに行きました。そんなことやる人は普通いないので、周囲の人には「どうかしている」って思われていたんじゃないかと(笑)。

——常務の時間を確保するのは相当大変だったのではないでしょうか。

そのとおりです(笑)。しかし、いろんな協力者に繋いでいただき、1時間取ることができました。熟考して、練りに練ってプレゼンを行いました。

——行動力がすごいですね。入社してからずっと想いを秘めていたのでしょうか。

積極的にチャレンジを始めたのは帰国してからですね。私は学生時代に起業して失敗しています。自分のレベルを底上げするためにはグローバル企業に入って経験を積む必要があると思ってソニーに入りました。

入社後、海外にチャレンジするという目標が叶い、日本人としての誇りを胸にイギリスに赴任しました。ですが、アジアの人として括られ、もっと優秀な人たちを目の当たりにし、自信を打ち砕かれて日本に帰ってきました(笑)。

イギリス駐在時の川村さん
(商談会のアフターパーティにて)

6年間厳しい環境で揉まれる中で、自分にまだできることがある、日本を盛り上げたいという想いが湧き、その過程で地域に目が向きました。地域にはポテンシャルがまだまだある。東京などの大都市だけでなく、地域が盛り上がることで日本も盛り上がる。それを実現したくてコーギアを創業しました。

——数ある地域の中で、どのように十勝・帯広と関わり始めたのでしょうか。

地方創生で動きのある自治体を探していた中で、グループの社員から紹介されて、十勝・帯広に行ったのがきっかけです。現地に行き、地元の方に話を伺うと、とても魅力的なスポットの集合体だと感じました。ですが、それが外から来る人には伝わっておらず、勿体ないと感じました。

魅力的なスポットがあるのに、その場の歴史や秘話といった説明がないと伝わらない。要は、ガイドが必要だと思いました。その人手が足りないのであれば、テクノロジーの力で解決しようと。

そこで、帯広で地域情報をまとめているソーゴー印刷さん(現クナウパブリッシング社)などとご一緒して、音声や音楽を聴きながら街を巡る音声コンテンツ『Locatone™(ロケトーン)(※)』を活用した音声コンテンツを一緒につくりました。

帯広駅を中心とした約1600k㎡のエリアを、ドライブで3日間楽しめるものになっています。十勝を訪れた方には、是非楽しんでいただきたいです。

(※)Locatone:ソニーが開発したSound AR™(現実世界に仮想世界の音が混ざり合う新感覚の音響体験)を楽しむためのアプリ。ツアーを開始し、マップ上にある特定のスポットを訪れると、位置情報に連動して自動的に音声や音楽が聞こえる仕様。音を聴きながら街をめぐることで、街の新しい魅力や楽しみ方を発見することができる。
Locatone公式ウェブサイト https://www.locatone.sony.net/

Web3とは

——他には、どんな事業をされているのでしょうか。

エンターテイメントとデジタルテクノロジーを活用して、地域を活性化する事業です。ブロックチェーンを活用したサービスを積極的に開発していて、いま特にフォーカスしているのは、Web3ですね。

——Web2やWeb3は最近よく聞きますが、何が違うんでしょうか。

中央集権的な大きなサービスがWeb2で、プラットフォーマーなどが提供するサービスを利用しているのが我々ユーザーです。対して、Web3は「所有のインターネット」と言われています。

例えば、あるメールサービスが終わってしまうと、今までのデータって全部消えてしまいますよね。ところがWeb3の世界では、サービス提供者が事業をやめたとしても、今までのデータが全部残ります。それは、所有のインターネットであるWeb3では、それぞれのユーザーが、自分のデータを自分たちで管理しているサービスの体系だからなんです。

日本政府も国家戦略に取り入れようと注目している領域です。Web2からWeb3への流れをうまく利用して、日本をアップデートしていこうという動きがあり、そこに我々も一緒になって盛り上げようとしています。

NFTが起こす『下剋上』

——Web3の実例はありますか?

他の自治体とですが、NFTを活用した電子市民証の発行に携わっています。

現在、人を評価するときの評価基準は限られたものばかりです。例えば、ボランティアを頑張っていますって人がいますよね。今まではそれを証明する術がなかった。しかし、電子市民証でその人の行動の軌跡を証明することで、その人の価値を高めることができる、そういう時代が来ています。

まだ相対的に評価されていないものが評価されて、ある種の下剋上が起きると思っています。私が地域に着目している理由もそこで、「いやいや、日本と言ったら東京ではなく帯広でしょ!」と思ってもらえるような、そんな社会を作りたい。これからは地域への貢献がもっと重要になると思いますよ。

ソニーのDNA

——以前、川村さんが「ソニーのDNA」とおっしゃっていたのが印象に残っているのですが、どんな意図だったんでしょうか。

そうですね…。ソニーは常にチャレンジャーであり続ける、「金のモルモット」という話があります。常にモルモットであり続けて、世の中にないものを作り出していく。そういうものを社風、精神として大事にしている会社で、それをソニーのDNAと言いたいなと私は思います。

それと、私の「日本のためにできることが自分にはまだある」という想いから会社が設立された経緯もあり、コーギアには「自分の能力をもっと発揮したい」という社員が集まっています。

——まさに金のモルモットですね。そんな川村社長が創業したコーギアの強みはどこにあるのでしょうか。

ソニーグループ内のスタートアップ企業ですが、ソニーではないことだと思います。

ソニーグループのリソースを最大限に利用できつつ、規模が大きい会社ではできないことを、恐れずに大胆に挑戦できる。外から見たら同じような環境を持っている会社は他にもあると思いますが、私たちには環境だけではなく「意志」もあります。

十勝・帯広に関わり続ける理由

——なぜ十勝・帯広と関わり続けていらっしゃるのでしょうか。

帯広市に熱心な職員さんがいるからですね。ご縁が一番大きいです。ビジネス全部そうだと思うんですけど、最終的に突き詰めると、人と人とのつながりが一番重要だと思っています。そういう意味では十勝・帯広とはご縁があると思っていますし、思っているだけでなくてカタチにしたいと思って行動しています。

地元の企業の方を帯広市さんからご紹介いただいて色々お話ししましたが、十勝・帯広には面白い企業が沢山ありますよね。うまく組み合わさるとかなり尖ったことができるなと。自治体とだけ組むのはビジネスとして難しいので、地元企業とどう組むかというのがすごく重要で、いくつかの条件が整ったときにビジネスとして成立します。

この地域にはインパクトのある新しいビジネスを創り上げる要素がたくさんある。あとはどう料理するかで、十勝・帯広のプレイヤーと日本を変えるような取り組みをご一緒できるように、これからも頑張りたいです。

インタビューを終えて

圧倒的なチャレンジ精神と行動力を持つ川村さん。対話の中で、いつも新たな視点や刺激を受けています。

戦後の焼野原から立ち上がり、成長する日本のイメージにも少なからず影響を与えた企業の1つであるソニー。川村さんには、ソニーのDNAが確かに受け継がれているように感じています。

食と農業を主力産業とする十勝地域。テクノロジーの力でこの領域の更なる成長や、全く別の新産業が生まれる可能性があると思います。我々も、コーギアさんとは必ずご縁があると感じていますので、インパクトのある事業をご一緒できれば嬉しいです!

多忙を極める川村さん、お忙しい中ありがとうございました!引き続き、よろしくお願いいたします!

最後まで読んでいただきありがとうございました。フォローとスキもお願いします!

※「Sound AR」および「Locatone」はソニーグループ株式会社またはその関連会社の商標です。