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住宅リフォーム会社のIoT住宅宿泊事業を通じたサステナブルへの挑戦

十勝・帯広リゾベーション協議会(※1)会員の㈱土屋ホームトピアさんの新規事業について、帯広支店長の阿部さんにお話を伺いました。

当事業は国土交通省の令和4年度サステナブル建築物等先導事業(次世代住宅型)に採択され、元農家の築50年の物件をフルリノベーションし、最新IoT住宅(※2)の宿泊体験を行っています。なぜ住宅のリフォーム会社が宿泊事業を行っているのか、理由を探ってみたいと思います。

(※1)十勝・帯広が日本におけるイノベーション創出のモデル地域となることを目的とする団体。
(※2)IoT…Internet of Thingsの略。あらゆるものがインターネットにつながることによる操作性の向上、日常のデータ取得などが進む領域。

阿部貴裕(あべ たかひろ)
北海道北見市出身。大学卒業後関東の電機メーカーに就職。発電プラントの制御システム設計に従事。その後北海道にUターンするため現在の土屋ホームトピアに入社。情報システム、総務部門を経て2022年11月に国交省次世代住宅プロジェクトに採択された本事業のスタートと共に現在の帯広支店勤務となる。趣味は読書。

「関係人口」に着目した一連の取り組み

 ――十勝・帯広リゾベーション協議会に加入されていますが、会社として関係人口というテーマには以前から注目されていたのでしょうか。

もともとは空き家の活用を念頭に、首都圏にお住まいの方に十勝に来てみたいと思う方を増やし、その中で移住したい方が出てくれば空き家所有者とつないでいく、ということを以前から考えていました。

弊社社長の菊地が十勝・帯広の地元企業さんとお付き合いしていく中で、KPMGモビリティ研究所の倉田さんをご紹介いただき、令和4年の11月に加入させていただきました。

――協議会に入るときは社内的に、入ってどうなるのかといった議論はなかったですか。

いえ、社長が自ら入れてくださいと鶴の一声で。お話をいただいた時に即決でした。(笑)

住宅リフォーム会社が宿泊事業を開始

――この取り組みはいつから構想してきたものなのでしょうか。

5~6年前くらいから空き家活用の提案、いわゆる民泊として空いている家を再利用してみませんかと提案しようと弊社社長の菊地が着想していました。それが3年ほど前に動きが具体化し、偶然この物件に出会って購入しました。

築50年を感じさせない立派な仕上がり

――土屋さんのグループは本社が札幌なので、なぜ十勝を選んだのか気になっていました。

北海道の中でも食や景色の豊かさなど魅力がある場所ということで、社内的に注目をしていました。弊社も帯広支店を開設してから30年以上経ちましたので、自称「地域密着」しているかなと思っています。(笑)ゆくゆくは函館や旭川も、という話は当時出ていましたが、最初はやっぱり十勝で、と。

――IoTを活用したスマートハウスへ、というアイディアはいつからお持ちだったのでしょうか。

先ほどの話とは別の文脈になりますが、IoT、住宅をインターネットにつなげることで何か地域貢献できないだろうかというのは弊社社長の菊地の大きなビジョンでもありました。

今回採択された国の事業は、実は6年くらい前からIoTスマートハウスの取組を行っていたんですよね。なので、どこかで企画提案しようとは思っていました。

偶然ですが、この農村部一帯はコロナ禍の期間に光回線が開通しました。じゃあ、この建物をつなげてみようかと。いろんな会社さんのIoTの取組を探している中で、東京の㈱ハウディさんと出会い、宿泊事業にIoTを合体させて、国に企画提案しようと。そこからは動きは早かったですね。

国交省・次世代住宅プロジェクトの概要:ススメ!次世代住宅 (nikkeibp.co.jp)

どんなIoT住宅なのか

――IoTの中でも睡眠をテーマにされていますが、どういった経緯で決められたのでしょうか。

事業提案にあたって、住まいに関わる部分だと睡眠というのが一つテーマになるな、と以前から思っていました。日本は睡眠時間が短いというのがありましたし、国の事業が5~6年続いてきた中でも、テーマ設定としてはその部分に着手した提案がなかったので、チャレンジしてみようと思ったんですよね。

――睡眠のデータはどのように取得するのでしょうか。

ベッドにセンサーがあって、タブレットで見ることができます。浅い眠りと深い眠りがグラフによって可視化され、睡眠スコアを点数化しています。心拍数、呼吸の乱れ、いびきの状態なども見ることができます。

――利用した方の反響はどうでしたか。

寝れないって感覚でいたけど数字にすると意外と深い眠りだったとか。可視化することによって安心感が生まれたり、不安が除かれたという実感があるようです。

また、住宅をスマートスピーカーで操作できることを知っている方も多いんですけど、宿泊された方の6割くらいは使ったことなかったと。ここでこうやって使えるんだ、便利だなと実感していただいて、買ってみようかなと言っていただいたり。今回は睡眠をテーマにしましたが、改良を加えて省エネの提案などもできるようにしたいと考えています。

タブレットや音声で家そのものを簡単操作できる

――建物から見える敷地内の畑はどのように手入れされているのですか。

ご厚意で近隣の農家さんが管理してくれています。購入時は荒れていた土地でしたが、ご挨拶しているうちに手伝うと言ってくださって。おかげさまで、とうもろこし、じゃがいも、枝豆、カボチャ、トマト、ピーマン、ズッキーニなどの収穫を利用者に体験していただくことができました。

農家さんが畑の土石を砕くところから手伝ってくれたそう

――それはすごいですね。実証事業は1年間とのことですが、終わった後の展開はどのように考えているのでしょうか。

宿泊事業、ゲストハウスを考えています。オフシーズンには飲食業をしてみたい方や長期滞在したい方へ安く提供してみたらどうだろうとか、いろいろ考えているところです。

飲食店営業許可の取得も見越したキッチン

長期間滞在していただいても大丈夫なように掃除機や洗濯機を備え付けています。キッチンには食器類も備えていますので、中長期で滞在していただいても食材さえ買っていただければ、自炊して生活できるように用意しています。

今後への想い

――今後に向けて、未来像などありますか。

建物を有料で使っていくのは令和6年度からなので、どれくらい来ていただけるかは未知数なんですよね。ただ、会社としてはこのような住宅を通して、お客様に常にその時の最高を提供していきたいという使命感がありますので、こういうIoTや既存住宅を別の目的に使う、活用していく取組とかを展開していきたいと考えております。ここがそういうことの情報発信拠点になれたらいいなと。

また、十勝・帯広リゾベーション協議会に参加してみて、十勝の方って開拓者精神がずっと続いている、強い場所だなと改めて実感して。私は北見市出身なんですけど、十勝は違うなという感じを受けています。協議会の皆さんの、十勝を盛り上げていこうっていう気持ちを強く感じるので、住宅を通してお役に立てればと思っています。

2階のワークスペースからは四方に広がる田園風景が望める

ここは古いものと新しいものが共存し、周りが自然に囲まれた中で、IoTという先端技術が共存している場所です。十勝エリアで見ても、大自然の中に食も充実していますし、大樹のロケットとか最先端のチャレンジをしているような方もいます。そんな開拓者精神の強さをいろんな方に実感していただきたいなと考えております。

個人的にはお子さんにいっぱいきてほしいなと。ここで自然にも触れて、先端の技術にも触れて、自然と科学を体感して両方大事にするような、若い人たちが育っていってくれるといいなと思っています。

インタビューを終えて

インタビューを通して、阿部さんを始め、会社として時代の流れを読み、先のことを考え、地域とのつながりを意識して取り組んでいる姿勢が印象的でした。住宅の新しい価値を提案しようと挑戦する姿は、十勝に根付く開拓者精神だと感じました。

十勝の自然や食という地域資源を活かした、新しい提案は私たちがまさに目指す将来像とも共通しています。また、人口減少社会において、既存ストックを活用した提案はまさにサスティナブルそのものだと思いました。このような取り組みが地域、ひいては日本のウェルビーイングにつながっていくように感じました。

一人でも多くの方が十勝に興味を持っていただけたら嬉しい限りです。ご連絡お待ちしております。

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