見出し画像

「観終わった後、ガストロノミーがわかります」WOWOWプラス原田俊英氏&映画監督杉山嘉一氏の想い(後編)

前編はぜひこちらから。

脚本作りと地域の関わり方

——我々は、地域の事業者や人々と首都圏の企業人が接すると何かが生まれるとの仮説を持って取り組んでいます。地域の人々との交流は脚本に影響を与えましたか。

杉山氏:
僕の最近の脚本の創り方というか、物語の創り方がまさにそうです。以前に監督脚本をした映画『川のながれに』は、栃木県の那須塩原市の塩原温泉郷が舞台ですがゼロから始め、そこに住む人々に会って、地域の魅力や苦労を聞いたり、色んな場所に行きました。実在する人物のモデルや実体験からフィクションとして物語を創るのは、創り方としてものすごく面白かったんですよね。

映画やドラマは基本的に絵空事なんですけど、全部が嘘だとSFになっちゃう。なので、実際の人物やエピソードから物語のキーワードや核となる部分を創り上げていくわけです。『帯広ガストロノミー』も、現地に話を聞きに行って、色んな出会いがあって創っていきました。

主人公は完全にフィクションですけど、作品に出てくる十勝・帯広の様々な場所や、その土地が持つ特有の魅力、そこに住む方々をモデルとした登場人物という嘘ではない要素によって、フィクションではありながら決して絵空事ではない作品ができたと思っています。

ビジネスが生まれる土壌・気風

——作品の仕上がりはいかがでしょうか。

原田氏:
作品を通して、自分達の街を誇れる体験をしていただける仕上がりになっていると思います。どういうことかというと、色んな街を見てきましたが、帯広は疲弊していない、だいぶ元気がいいなという印象を受けたんですよ。話を聞けば、「ばんえい競馬」がコロナの最中で売上過去最高とか他と何が違うんだろうと。

考えてみたら、いい意味で十勝・帯広って商売っ気がある人がたくさんいることだと思うんですよ。僕はそこがいいと思っていて。十勝・帯広の農家さんと話をしていると、想像している農家さんと違うなと。農家の人と話しているというよりもビジネスパーソンと話をしている感じがしました。

——わかります。うまく言語化できてなかったのですが、はっとしました。

原田氏:
僕はビジネスパーソンが集まっているから新しいことが生まれるのだろうし、ビジネスパーソンがやる農業だからこそ新しいものが生まれているんじゃないかなと。

大規模農業を軸に挑戦し続けています

映像の力の可能性

——映像は他媒体にはない特殊な力があると思いますが、メディアに長年携わっているお二人のお考えをお聞かせください。

原田氏:
映像の持つ力は物理的に視覚と聴覚から情報が入ってきて心が動かされる、という特徴があります。現在は映像をすぐに流通させることができるので、それも含めて映像は力があると思っています。しかも、いろんなツールもデバイスもどんどん出てきて、違う言語でも難しくない。垣根が下がり、コンテンツをすぐにリリースできる土壌があるので、映像は便利だと思っています。

形態もだいぶ変わってきて、テレビを縦で見る人が増えました。電車のトレインビジョンは、3つの画面で違うものやっていたり、3つの画面で1つのものを表現していたりする。映像の作り方、伝わり方、使い方もどんどん変わっていくだろうと。現時点で人に伝える手段として、映像はすごく有効なんじゃないかなと思っています。

杉山氏:
映像の力に関しては原田さんと同意見です。映像と音楽から成って、人物、キャラクターが物語を語っていくというのは、記憶に定着するし、感情に訴えかけられる。映像の力は以前から強かったけれども、今はあらゆるところで見れるので逆に気をつけなきゃいけない。街のどこを見ても映像に溢れ、ない瞬間がないんじゃないかという時代だから。

若気の至りなんですが、僕は以前、人生なんてろくなものじゃなくて、人は結局一人で死んでいくんだみたいな退廃的、悲観的な物語が好きだったんですよ(笑)。

15年前、WOWOWシナリオ大賞を頂いたドラマ『GO APE』は、暴力の連鎖をテーマに描いたアクションエンターテインメントで、それはそれでまあ嫌いじゃないんですが(笑)。でも最近は今の日本でそういうのは描きたくないなと。『帯広ガストロノミー』のように、なんとかなるんじゃないか?なんかもう少しがんばってみるか!と前向きになれる物語を創っていきたいと思っています。

都市と地方の情報格差

——文化あるいは情報に都市と地方で差を感じることがありますが、どうお考えでしょうか。

原田氏:
インフラが整ってきて情報格差はほぼ無いという意識も多いと思うのですが、でもやっぱり東京と地方との情報格差はあると思っています。東京だと要る・要らないに関わらずとにかく拒否権なく情報が入ってきちゃうんですよ。街を歩いていても情報が視覚的にどんどん飛び込んでくるので、良くも悪くも情報格差はあるかなと思っています。

街に溢れる映像コンテンツ

逆に地方にそれを埋める何かがあるのかというと、首都圏にはない情報は当然あるし、発信されるべき情報はすごくたくさんあるはずです。受信するだけではなく、地方から作って発信することをとにかくやっていく。手段は今なら色々ありますからね。テレビの長寿番組、グルメ系の多くは地方をネタとしたものです。これが根拠になるかなと思っています。

十勝・帯広への期待

——今後も色々な地域で活動されるお二人から見た地域への期待感や関わりが続く部分があればお願いします。

原田氏:
帯広市へのメッセージとして、行政の方の熱意がなく、やってくれるならやってください状態だと民間企業はそこには絶対協力してくれません。消費者と繋がって常に消費者のことを考えている民間企業の人たちと一緒に作っていくことは、地方創生にとってすごく大事なことだと思っています。

我々は映像という形になりましたが、今後何かをされていく際、行政と民間との温度感をお互いどれだけ合わせてやっていけるかがすごく大事だと思っています。次も、その次もそういった姿勢でいろんなことにチャレンジしていっていただけると、今回の映像を地方創生支援第一弾として送り出す意味合いも出てきます。帯広市が成功事例を生むイノベーターとしての位置づけも出来上がっていくと思います。

杉山氏:
すばらしい。原田さんのおっしゃるとおりだと思います。そのあたりは作品でも描いているつもりです。十勝・帯広は世界が気づき始めているし、コロナ禍が終わって作品をご覧になった方々が来たら忙しくなっちゃうと思いますのでがんばってください!(笑)

十勝・帯広は意外にも東京から近いので、おいしいものを食べに母を連れて再訪したいなと思っています。ただ母は高齢で足が悪く移動に悩むんですよねぇ。移動手段が車しか無い訳ですが、僕が免許を持っていないので。まあこれは北海道あるあるで十勝・帯広に限りませんけど(笑)。

インタビューを終えて

十勝・帯広への熱い想いを語っていただき、予定の時間を大幅に越えていました。原田さん、杉山さん、ありがとうございました。オンエアを楽しみにしています。

近頃、地域でガストロノミーを事業化しようとする動きもあり、『ガストロノミー』の言葉をよく聞くようになりました。ですが、恥ずかしながら「何となく」の意味しか理解していませんでした。「観たらガストロノミーの意味がわかる」、日本の食糧基地十勝・帯広を舞台とした『帯広ガストロノミー』、楽しみでしかありません。

「循環が生む美しい食」、「商売っ気のある農家さん」、「DNAの再認識」などなど。お二人の言葉から、十勝・帯広で、新しい何かが生まれる要素が眠っていると思いましたし、ヒントをいただきました。

このnoteを読んでくださった読者の皆様も、十勝・帯広でもう一発、鍬を打ち込んでみませんか?随時十勝ツアーを開催しています。興味が湧きましたらご連絡をお待ちしております。

最後まで読んでいただきありがとうございました。フォローとスキもお願いします!